[ ] : 電気がつけっぱなしの部屋。
[ ]
:
そこには”こたつ”。
そしてその上には一台のノートパソコン。
[ ] : 最後に一人。
[ ] : その上に寝そべる────
[ ] 天王寺璃奈 : 「────ふごっ」
[ ]
天王寺璃奈 :
ぱちりと目を覚ます。
[ ]
天王寺璃奈 :
重い眠気の中、ゆっくりと顔を上げて。
[ ]
天王寺璃奈 :
首が重い。
あれ……ちゃんと布団で寝なかったんだっけ。
[ ] 涼宮ハルヒ : ガタァンッ!!
[ ] 涼宮ハルヒ : 「りなりーー!!」
[ ] 天王寺璃奈 : 「ぐむむむ……わわ」
[ ] 天王寺璃奈 : びくん、と体を震わせてそちらへと向く。
[ ] 天王寺璃奈 : 「……ハルヒ」
[ ] 涼宮ハルヒ : 「こら!今日はみんなで居間で団欒する予定でしょう!」
[ ] 涼宮ハルヒ : 扉を開け、拳を横腹に当て、りなりーをじっと見て。
[ ] 涼宮ハルヒ : 「……うぅぅ!!さっむ!!」
[ ]
天王寺璃奈 :
私の友人、涼宮ハルヒ。
数少ない友人の一人であり、私を引っ張ってくれる人。
[ ] 天王寺璃奈 : 「…課題やってて」
[ ] 涼宮ハルヒ : 「ちょっと中入るわね!全く……!廊下にも暖房つけなさいよ!」
[ ] 涼宮ハルヒ : 部屋の扉を締め。
[ ] 涼宮ハルヒ : 「あら課題?どれどれ」
[ ] 天王寺璃奈 : 目線をパソコンに写して、ハルヒの席を開ける。
[ ] 涼宮ハルヒ : 「……へぇ~?プログラミング……?なんか、すごいわね相変わらず!」
[ ] 涼宮ハルヒ : りなりーの横にちょこんと座り、その画面を覗く。
[ ]
天王寺璃奈 :
「………えへへ」
[ ] 涼宮ハルヒ : はぁ~~この子、本当に賢いわね~……。
[ ] 涼宮ハルヒ : 「……って、そうじゃないわよ~!りなりー!」
[ ] 天王寺璃奈 : とはいえ、顔はまんざらそうでもなく。無表情。
[ ] 天王寺璃奈 : ただ、気持ちばかり…口角が上がっているような。
[ ] 天王寺璃奈 : 「…?」
[ ] 涼宮ハルヒ : りなりーの方を、至近距離でじっと見て。
[ ] 涼宮ハルヒ : 「ほら、今日はアレよ、アレ!」
[ ] 天王寺璃奈 : ぱちぱち、と瞼を1度2度開き。
[ ] 涼宮ハルヒ : 「確か……みんなで初詣に行くとか、そんな予定だったはずよ!」
[ ] 涼宮ハルヒ : 「課題なんて、今はあとあと!」
[ ] 天王寺璃奈 : 「…あうあう」
[ ] 天王寺璃奈 : 「それは…そうだった」
[ ] 涼宮ハルヒ : 「ほぉら、来なさい!」
[ ] 涼宮ハルヒ : りなりーの腕をぐいっと引っ張る。
[ ] 天王寺璃奈 : 「あうう~…ここから出るの」
[ ] 天王寺璃奈 : 「……さぶい」
[ ] 涼宮ハルヒ : 「……全く、しょうがないわね……」
[ ] 涼宮ハルヒ : 「ま、それは私も同感よ」
[ ] 涼宮ハルヒ : 「はい、これなら寒くないでしょう?」
[ ] 天王寺璃奈 : 小動物みたいな目でハルヒを見上げ。
[ ] 涼宮ハルヒ : そう言い、りなりーの手をぎゅっと握る。
[ ] 天王寺璃奈 : 「……むう…?」
[ ] 天王寺璃奈 : 「………」
[ ] 涼宮ハルヒ : ハルヒ自身も、冷たい手をしてはいるが、熱は一応伝わる。
[ ]
天王寺璃奈 :
手からハルヒの温もりが伝わり。
布団で冷えていた体も、少しだけ。
[ ] 天王寺璃奈 : 「…あったかい」
[ ] 涼宮ハルヒ : 「ふふ、でしょ?」
[ ] 天王寺璃奈 : ……こうやってハルヒはいつも、積極的に私と話してくれる。
[ ] 涼宮ハルヒ : ……誰かの迷惑になるだとか、そういうのを一切考えずに、勝手に動く私。
[ ] 涼宮ハルヒ : 正直なところ……。
[ ] 涼宮ハルヒ : ……私のこの性格、みんなの迷惑になっていないか、不安なところは、あるわ。
[ ]
天王寺璃奈 :
私自身奥手で、感情を表に出せない。
だからこそ…ハルヒのこうやって、振り回してくれるところは。
[ ] 涼宮ハルヒ : ……それでも、私は……"楽しい"を優先したいわ。
[ ] 涼宮ハルヒ : 人生は、1度切りだもの。
[ ] 天王寺璃奈 : 「…………」
[ ] 涼宮ハルヒ : 「ほら、行くわよりなりー? ……あら?インタンホーンが鳴ったわね?」
[ ] 天王寺璃奈 : ぽす、と体をハルヒの方に倒しながら。
[ ] 天王寺璃奈 : 「……うん」
[ ] 涼宮ハルヒ : 「……あ、あら」
[ ] 涼宮ハルヒ : それを拒絶することもなく、受け止め。
[ ] 天王寺璃奈 : 「……こうした方が、もっと暖かいかなって」
[ ] 涼宮ハルヒ : 「……!」
[ ] 涼宮ハルヒ : 「そ、そうね……!ええ、私もそう思うわ!」
[ ] 涼宮ハルヒ : 少し耳元が赤くなり、視線を逸らす。
[ ]
天王寺璃奈 :
相変わらず、無表情。
……どこか、頬に赤みがともっているが。
[ ] 涼宮ハルヒ : ……ちょ、ちょっとこれ、恥ずかしいわ……!
[ ] 涼宮ハルヒ : ……二人っきりっていうのもあるし……。
[ ]
涼宮ハルヒ :
逆に二人っきりだから助かった、のかしら……?
あいつらに見られたら、何ていじられるか……分かったもんじゃないわね!
[ ] 涼宮ハルヒ : 「………」
[ ] 涼宮ハルヒ : りなりーの顔をじっと見て。
[ ] 涼宮ハルヒ : そのほっぺを摘み、ぎゅ~っと横へ引っ張ってみせる。
[ ]
天王寺璃奈 :
……ハルヒの事は、嫌いじゃない。
だからこそ、別に身を預けてもいいと思ってる。
……恥ずかしいってよりも、そっちの方が……優先された。
[ ] 天王寺璃奈 : 「……ほへ」
[ ] 涼宮ハルヒ : 「スマイルスマイル~♪」
[ ]
天王寺璃奈 :
「んうう~~~……?」
[ ] 涼宮ハルヒ : 口角を上げるように、ほっぺを持ち上げる。
[ ] 涼宮ハルヒ : 「あははは~~!」
[ ]
天王寺璃奈 :
「……ハルヒ、なにするの」
ほっぺはむにぃ、と上がり。
[ ] 涼宮ハルヒ : そのりなりーの表情に、けらけらと笑う。
[ ] 涼宮ハルヒ : 「え~~? う~~~~ん」
[ ] 涼宮ハルヒ : 「私なりの、愛情表現と言ったところかしら?」
[ ] 天王寺璃奈 : 寝ていた時についていた、キーボード跡にもよりさらに変な顔に。
[ ] 天王寺璃奈 : 「………」
[ ] 天王寺璃奈 : 「……あいじょう」
[ ] 涼宮ハルヒ : 「……」
[ ] 涼宮ハルヒ : 「……ち、ちょっと、冗談よ冗談!」
[ ] 涼宮ハルヒ : 思わず視線を逸らす。
[ ] 天王寺璃奈 : 「…………」
[ ] 涼宮ハルヒ : 「なんて事ないジョークよ!真に受けないで!」
[ ] 天王寺璃奈 : 「…こんな私にでも、愛情があるっていうなら、嬉しいかも」
[ ] 涼宮ハルヒ : 顔を赤らめながら、そう言う。
[ ] 天王寺璃奈 : ぽそりぽそり、そう言いながら。
[ ] 涼宮ハルヒ : ……こ、こっぱずかしいわ……!ほんと……!
[ ] 涼宮ハルヒ : 「……!」
[ ] 涼宮ハルヒ : 「……そ、そう、かしら?」
[ ]
天王寺璃奈 :
……えへへ!嬉しいな…
……あんまり話せてない私でも、こうやって構ってくれるなんて…
[ ] 天王寺璃奈 : こく、と頷く。
[ ] 涼宮ハルヒ : ………この子は……本当に、すごいわね……。
[ ] 涼宮ハルヒ : 私が引っ張ってるようだけれども、その実は、逆、よね……。
[ ] 涼宮ハルヒ : ……私が、りなりーに助けられてるわ、色々と、ね……。
[ ] 涼宮ハルヒ : 「……は、恥ずかしいから……!早く戻りましょう?ね?」
[ ]
天王寺璃奈 :
…口にも顔にも、気持ちを伝えられないけど…
伝わってないなりに、私は何か、してあげたい。
[ ] 天王寺璃奈 : 「…………」
[ ] 涼宮ハルヒ : 自然と
[ ] 涼宮ハルヒ : りなりーと繋いでる手の力が強くなる。
[ ] 天王寺璃奈 : その力に、眉が下がり。
[ ] 天王寺璃奈 : 「……私は、もう少し」
[ ] 天王寺璃奈 : 「話したいけど」
[ ] 涼宮ハルヒ : 「………!!」
[ ] 天王寺璃奈 : ……握り返す。
[ ] 涼宮ハルヒ : 「っ……!そ、それは……」
[ ] 涼宮ハルヒ : な、なんて……なんて……!
[ ] 涼宮ハルヒ : 魅惑的な、誘い……って、私のバカー!?
[ ] 天王寺璃奈 : 俯きながらも、しっかりと言葉を伝えて。
[ ] 涼宮ハルヒ : 何ドキドキしてるの私!?
[ ] 天王寺璃奈 : ……もう少し、もう少しだけ。
[ ] 涼宮ハルヒ : 私達、女の子同士なんですけどぉ!?
[ ] 天王寺璃奈 : ……ハルヒを、独占したいな……なんて。
[ ] 涼宮ハルヒ : こんなの、無いわよ!無い無い!私達は友達!ええそうよ!とーもーだーちー!
[ ] 涼宮ハルヒ : 「………っ」
[ ] 天王寺璃奈 : 「……だめ?」
[ ] 涼宮ハルヒ : 自分を見るりなりーの熱い瞳に、唇を噛み締める。
[ ]
天王寺璃奈 :
無表情。
しかし、どこか悲しそうに、見つめて。
[ ] 涼宮ハルヒ : 「……き、今日くらいは……いいんじゃないかしら……?」
[ ] 涼宮ハルヒ : 「……ええ、そうよ、初詣に行く時間だって、まだまだ先だし……?多分」
[ ] 天王寺璃奈 : 「…よかった」
[ ] 天王寺璃奈 : 「じゃあ、いっぱい話せるね」
[ ] 天王寺璃奈 : 無表情。
[ ] 天王寺璃奈 : しかし、目は明らかに輝いていて。
[ ] 涼宮ハルヒ : そうして、りなりーが入っていた、りなりー特製のこたつの中へと足を運ぶ。
[ ] 涼宮ハルヒ : 「………ふふ、そうね」
[ ] 涼宮ハルヒ : りなりーの頭を撫でる。
[ ] 涼宮ハルヒ : 「可愛いわねぇ、ほーんと」
[ ]
天王寺璃奈 :
…私は、ハルヒと話がしたい。
楽しいから。
こんな私でも、いっぱいおしゃべりしてくれるから。
[ ] 天王寺璃奈 : 「……!」
[ ] 天王寺璃奈 : 「……あ、あうあう」
[ ] 涼宮ハルヒ : 「……へ?」
[ ] 涼宮ハルヒ : 「あ、あーーー!いえ、これはあれよ!!」
[ ] 涼宮ハルヒ : 「えーっと、なんだったかしら……その……」
[ ] 涼宮ハルヒ : 「……ほら!可愛いにも2種類!あるじゃない!」
[ ]
天王寺璃奈 :
撫でられて、可愛いなどと言われて。
あたふたとしながら。
[ ] 天王寺璃奈 : 「…う、うん」
[ ] 涼宮ハルヒ : 「好きな人に対する可愛いと!愛玩動物に対する可愛い!それの後者のことを言ったのよ!」
[ ] 涼宮ハルヒ : ……そう、なのかしら、ね……。
[ ] 天王寺璃奈 : 「……動物」
[ ] 涼宮ハルヒ : ……き、きっとそうよ。
[ ] 天王寺璃奈 : 「……どっちでも、私は……」
[ ] 涼宮ハルヒ : だって私達……女の子同士じゃないの……。
[ ] 涼宮ハルヒ : 「……え?」
[ ] 天王寺璃奈 : う、うれ…
[ ] 天王寺璃奈 : うれし……
[ ] 天王寺璃奈 : 「……なんでも、ない」
[ ] 涼宮ハルヒ : 「……っ……」
[ ] 涼宮ハルヒ : 「……そ、そう……」
[ ] 天王寺璃奈 : …少しだけ、喉に引っかかったように。
[ ] 涼宮ハルヒ : ………そうよ、この感情は……可愛いペットを愛でる時のような、そういう愛情なのよ……。
[ ]
天王寺璃奈 :
それが出ることはなかった。
……その想いは、膨らみ続けるってわかってるけど、口から出ない。
[ ]
涼宮ハルヒ :
……ラブじゃなく、ライクなのよ……。
……………? ……どうして、胸が少し、突っかかるのかしら……。
[ ] 天王寺璃奈 : 「……うん…」
[ ] 涼宮ハルヒ : 「………」
[ ] 涼宮ハルヒ : 「……ほ、ほら!りなりー!えっと、ほら……!」
[ ] 涼宮ハルヒ : 手団扇で自身の首元を仰ぎながら。
[ ]
天王寺璃奈 :
……ハルヒに可愛いって言われることは、嫌いじゃなくて…
嬉しい、それがどういう感情でも、私は構わない……
[ ] 涼宮ハルヒ : 冬だというのに、大量の汗が滲み出ながら。
[ ] 天王寺璃奈 : でも、その想いを表に出すことだけは難しい。
[ ] 涼宮ハルヒ : 「……た、楽しいトークでもしようじゃないの!」
[ ]
天王寺璃奈 :
……プログラミングとは違って、難しいな。
私って。
[ ] 天王寺璃奈 : 「たのしいとーく」
[ ] 天王寺璃奈 : 「……うーん」
[ ] 涼宮ハルヒ : ……お、おっかしいわね……。
[ ] 天王寺璃奈 : 「……今年は、どんな年にしたいとか」
[ ] 涼宮ハルヒ : わ、話題が、出てこないわ……!
[ ] 涼宮ハルヒ : 「……!」
[ ]
天王寺璃奈 :
ぼそぼそと、こぼす。
…こんな話題でよかったの、かなあ…?
[ ] 涼宮ハルヒ : 「今年の抱負ね!いいじゃない!」
[ ] 涼宮ハルヒ : にっこりとりなりーに笑う。
[ ] 天王寺璃奈 : 「………!」
[ ] 天王寺璃奈 : …え、えへへ…褒められた…。
[ ] 天王寺璃奈 : 無表情のまま。
[ ] 涼宮ハルヒ : 無表情ながらも、笑って見えるその表情に、つられてハルヒも笑みを溢し。
[ ] 涼宮ハルヒ : 「ふふ、それじゃあ……りなりーの抱負、教えてもらおうかしらねぇ?」
[ ] 天王寺璃奈 : 「……私、かあ」
[ ] 涼宮ハルヒ : そう言い、りなりーの部屋のこたつへと足を入れる。
[ ] 天王寺璃奈 : ハルヒのコタツ分、少し体を開け。
[ ] 天王寺璃奈 : 「…私は………」
[ ]
涼宮ハルヒ :
「ん、ありがとりなりー」
スペース確保にお礼を言い。
[ ] 天王寺璃奈 : 「……もっと、仲良くなりたい」
[ ] 涼宮ハルヒ : 「……へぇ?」
[ ] 涼宮ハルヒ : 「いいじゃない!友達はたくさんいると楽しいわよ!」
[ ] 天王寺璃奈 : ……みんなと、そして……。
[ ]
天王寺璃奈 :
………。
これは、いっか。
[ ] 涼宮ハルヒ : 太陽のような笑みを見せる。
[ ] 天王寺璃奈 : 「……ハルヒは、友だち沢山だもんね」
[ ] 涼宮ハルヒ : 「ふっふっふ~!」
[ ] 涼宮ハルヒ : 「すごいでしょ!」
[ ] 涼宮ハルヒ : 子どもが自慢するように、ドヤ顔を見せる。
[ ] 天王寺璃奈 : ……仲良くなるためには、もっと私の心を表に出さないといけないんだけど……。
[ ] 天王寺璃奈 : 「……すごい!」
[ ] 天王寺璃奈 : 「わたしは多いわけじゃないから…尊敬する」
[ ] 天王寺璃奈 : ぱちぱち、と軽く手を叩き。
[ ] 涼宮ハルヒ : 尊敬、という言葉に嬉しそうな表情を見せながら。
[ ] 涼宮ハルヒ : 少し、複雑な顔も見せる。
[ ] 涼宮ハルヒ : 「……もし、りなりーにたくさん友達ができたら……」
[ ]
天王寺璃奈 :
……ハルヒは、みんなに対して明るいから。
…そこが、友だちと、そして…仲良くなるポイントなんだろうなって。
[ ] 涼宮ハルヒ : ………。
[ ] 涼宮ハルヒ : ……こうして、りなりーと一緒に話す機会も、きっと、減っていっちゃうのよね。
[ ] 涼宮ハルヒ : ……それは……。
[ ] 天王寺璃奈 : 「………?」
[ ] 涼宮ハルヒ : ………少し…寂しい……。
[ ] 涼宮ハルヒ : 「……っ!?」
[ ] 涼宮ハルヒ : 「あ、え、ど、どうしたの!?」
[ ] 天王寺璃奈 : 「………ハルヒがボーっとしてるの、珍しいなって」
[ ] 涼宮ハルヒ : りなりーの目に反応し、慌てる。
[ ] 天王寺璃奈 : 少し覗き込むように。
[ ] 涼宮ハルヒ : 「何よ!?私だって色々考え事するわよ!?」
[ ] 涼宮ハルヒ : 「────────んなっ!?」
[ ] 天王寺璃奈 : 「考える前に、しゅぱっと」
[ ] 涼宮ハルヒ : ち、近いっ………!?
[ ]
天王寺璃奈 :
「そんな感じだと思ってた」
じーー。
[ ] 涼宮ハルヒ : あ、あわわわわわ………。
[ ] 涼宮ハルヒ : 「なななな、なんでもないわよ!!」
[ ] 涼宮ハルヒ : 「ほ、ほら!!だからえっと、何だったかしら……」
[ ]
天王寺璃奈 :
「…………むう」
無表情のまま、顔を下げて。
[ ] 涼宮ハルヒ : 「友達!たくさん作りたいんでしょう?」
[ ] 天王寺璃奈 : 「……あ、う、むう」
[ ] 涼宮ハルヒ : 「それだったら、ゆかりに綾乃、江風にフルフルに、新年の挨拶、しましょ?」
[ ] 天王寺璃奈 : ……ほんとは、仲良くなるのは……一人だけでも……。
[ ] 涼宮ハルヒ : ね?と首を傾げ、りなりーに笑ってみせる。
[ ] 天王寺璃奈 : 少し、言いよどむ。
[ ] 天王寺璃奈 : 「……まだ」
[ ] 天王寺璃奈 : 「ハルヒの抱負、聞いてない」
[ ] 涼宮ハルヒ : 「あ」
[ ] 天王寺璃奈 : ……少しだけでも、ハルヒとの時間を伸ばそうと。
[ ] 涼宮ハルヒ : 「そういえばそうだったわね……!んーーー、そうねぇ……」
[ ] 天王寺璃奈 : 苦し紛れに、言葉を紡ぎだす。
[ ] 涼宮ハルヒ : りなりーをじっと見ながら……。
[ ]
天王寺璃奈 :
「うん」
再び座り直し。
[ ] 涼宮ハルヒ : 「……もう少し、自分に素直になりたいわね」
[ ] 涼宮ハルヒ : 「……なんて」
[ ] 涼宮ハルヒ : 「今のなーし!」
[ ] 涼宮ハルヒ : 「今年の私の抱負はズバリ!」
[ ]
天王寺璃奈 :
「……」
素直。
[ ] 天王寺璃奈 : ………ハルヒも、案外……心の内を、見せてないのかな。
[ ] 天王寺璃奈 : 「うん」
[ ] 涼宮ハルヒ : 「ただの人間だけじゃなく!宇宙人!未来人!異世界人!超能力者!ありとあらゆる人達と友達になりたいわ!」
[ ] 天王寺璃奈 : 「……色んな人と、友だちに?」
[ ] 涼宮ハルヒ : 「ええ!」
[ ] 涼宮ハルヒ : 力強く頷く。
[ ] 涼宮ハルヒ : この望みは、ハルヒがずーっと願ってきたものだ。
[ ] 涼宮ハルヒ : 退屈な日常から飛び出たい。
[ ] 天王寺璃奈 : 「………」
[ ] 天王寺璃奈 : …………………。
[ ] 涼宮ハルヒ : そう言った想いの込められた、望み。
[ ] 天王寺璃奈 : 別に、私が気にすることじゃないけど…。
[ ] 涼宮ハルヒ : ……ただ。
[ ] 涼宮ハルヒ : ………今はもう、"退屈な"日常なんかじゃ、ない。
[ ] 天王寺璃奈 : ………それは、なんというか。
[ ]
天王寺璃奈 :
……嫌だな、と。
…聞いている中でも、そう思ってしまう。
[ ] 天王寺璃奈 : 夢を否定してしまう私に嫌気がさしながらも。
[ ] 涼宮ハルヒ : ………じゃあ、この望みは、もう私は……?
[ ] 天王寺璃奈 : 「…いい、抱負だと思う」
[ ] 涼宮ハルヒ : …………自分でも、自分のことが、よく分からなくなってきて。
[ ] 涼宮ハルヒ : 「……!そ、そう?」
[ ] 涼宮ハルヒ : 「ふふ、ありがと、りなりー」
[ ] 涼宮ハルヒ : りなりーに笑ってみせる。
[ ]
天王寺璃奈 :
……なんで嫌なのか、とか。
人の望みは否定するべきじゃない、とか。
ぐちゃぐちゃになりながらも。
[ ] 天王寺璃奈 : 「……あ、う、ん」
[ ] 天王寺璃奈 : 無表情。
[ ]
天王寺璃奈 :
だけど、少し。
……不満顔。
[ ] 天王寺璃奈 : 「……私たち二人とも、似た夢だね」
[ ] 涼宮ハルヒ : 「……そう、ね」
[ ] 涼宮ハルヒ : 「私達、ひょっとしたら……」
[ ] 涼宮ハルヒ : 「……ドッペルゲンガー?なーんて!」
[ ] 涼宮ハルヒ : いたずらな笑みを見せる。
[ ] 天王寺璃奈 : 「……むー」
[ ] 天王寺璃奈 : 自分の頬に、手を添えながら。
[ ] 天王寺璃奈 : ハルヒの頬に手を添える。
[ ] 涼宮ハルヒ : 「……へっ!?」
[ ] 涼宮ハルヒ : 添えられた手に、びくりと体が跳ね上がる。
[ ] 天王寺璃奈 : 「…ハルヒと私は、でも違うと思う」
[ ] 天王寺璃奈 : 「……暖かさが、ぜんぜん…」
[ ] 涼宮ハルヒ : 「………」
[ ] 天王寺璃奈 : 「ハルヒの方が、あったかい」
[ ] 涼宮ハルヒ : 「……りなりー」
[ ] 涼宮ハルヒ : 自身の頬へ触れたりなりーの手を
[ ] 涼宮ハルヒ : 自分の手のひらで、包み込み。
[ ] 涼宮ハルヒ : 「そんなこと無いわよ」
[ ] 涼宮ハルヒ : りなりーの目をじっと見て。
[ ] 涼宮ハルヒ : 「りなりーも、温かいわ」
[ ] 涼宮ハルヒ : 「自分を卑下しないで」
[ ] 天王寺璃奈 : ……口下手で話せない私と、口上手の彼女なら……。
[ ] 天王寺璃奈 : 「……っ」
[ ] 涼宮ハルヒ : 「……そ、その……あれよ?」
[ ] 涼宮ハルヒ : 「……私だって、りなりーと出会って……」
[ ] 天王寺璃奈 : ……私が、暖かい…?
[ ]
天王寺璃奈 :
「………」
無言で、こくこくと。
[ ]
涼宮ハルヒ :
「………色々なことを、知れて……ええ、ほら、プログラミングとか……」
……違う。そうじゃない。
[ ] 涼宮ハルヒ : 私が、りなりーと出会って、知ったのは、そんなことじゃない。
[ ] 天王寺璃奈 : 「………」
[ ] 涼宮ハルヒ : 唇を噛み締め。
[ ] 天王寺璃奈 : 「それ、だけ…?」
[ ] 天王寺璃奈 : ……あ、う。
[ ] 涼宮ハルヒ : 「………えっ!?ち、違う、わよ!」
[ ] 天王寺璃奈 : ……なんでだか、口からぼそりと出てしまって。
[ ] 涼宮ハルヒ : 咄嗟に、そう叫ぶ。
[ ] 天王寺璃奈 : 「……わ、わ……今、のは…」
[ ] 涼宮ハルヒ : 「あ………ご、ごめんなさい」
[ ] 天王寺璃奈 : 慌てて、ハルヒへと向き直り。
[ ] 天王寺璃奈 : 「………でも」
[ ] 天王寺璃奈 : …教えて欲しい、と瞳を向けて。
[ ] 涼宮ハルヒ : 「っ…………」
[ ] 涼宮ハルヒ : 「………そ、その……私の、勝手な思い込み、かもしれないけれども……」
[ ] 天王寺璃奈 : 「……うん」
[ ] 涼宮ハルヒ : 「……私のことを、ずっと見てくれて……それで……なんて言えばいいのかしら……表面の部分だけじゃなく……中身まで、見てくれている、っていうか……」
[ ]
天王寺璃奈 :
普段気持ちを上手く伝えられない、けど……。
今はなんだか伝えられた気がして。
[ ] 涼宮ハルヒ : 「………結構我儘じゃない?私って」
[ ] 天王寺璃奈 : 「……そうでも、ない」
[ ] 涼宮ハルヒ : 「だから………こんな私にも、嫌がらないで……」
[ ] 涼宮ハルヒ : 「……っ」
[ ] 天王寺璃奈 : 「ハルヒの、我儘は……なんだろう」
[ ] 天王寺璃奈 : たの、しい…うれしい、気持ちがある……。
[ ] 天王寺璃奈 : 何度も言葉が浮かんでは消えて。
[ ] 天王寺璃奈 : 「……好き」
[ ] 涼宮ハルヒ : 「……へ?」
[ ] 涼宮ハルヒ : へ?
[ ] 天王寺璃奈 : ぽつり、一言。
[ ] 涼宮ハルヒ : フリーズ。
[ ] 天王寺璃奈 : …………。
[ ] 涼宮ハルヒ : 「………………。」
[ ]
天王寺璃奈 :
あ、あれ……やっちゃった、かな…!?
…私、あ、そうだ、好きって…!!!
[ ] 涼宮ハルヒ : 表情が固まる、瞼を何度も閉じ。
[ ] 涼宮ハルヒ : 「……あ、あーーー!え、ええ!そうね!!」
[ ] 天王寺璃奈 : 浮かんで消えた言葉で、最も、最も”我儘”な言葉が出てしまって。
[ ] 涼宮ハルヒ : 「"友達"として!ね!」
[ ] 涼宮ハルヒ : 「分かってるわ!ええ!」
[ ] 涼宮ハルヒ : 「私も、好きよ」
[ ] 涼宮ハルヒ : …………。
[ ] 天王寺璃奈 : 「あ」
[ ] 涼宮ハルヒ : 心が、少し痛い。
[ ] 天王寺璃奈 : ………ぶわり、と。
[ ] 天王寺璃奈 : 心の中が突き抜けたような感じがして。
[ ] 涼宮ハルヒ : ………でも、これで、いいのよ……。
[ ] 涼宮ハルヒ : だって、当たり前じゃない……。
[ ] 涼宮ハルヒ : 恋愛は、異性同士でするもの。
[ ] 天王寺璃奈 : ……嬉しい、けど。嬉しいけど…なんだか。
[ ] 涼宮ハルヒ : テレビドラマでも、漫画でも、全部そう。
[ ] 天王寺璃奈 : 物足りない。
[ ] 涼宮ハルヒ : 男の子と、女の子が愛し合う、それが、恋だもの。
[ ] 涼宮ハルヒ : ……だから、こんなの……きっと、違う……。
[ ] 涼宮ハルヒ : 私の心臓がずっと、ばくばくして止まらないのは……。
[ ] 涼宮ハルヒ :
[ ] 涼宮ハルヒ : 恋
[ ] 涼宮ハルヒ :
[ ] 涼宮ハルヒ : なんかじゃない……。
[ ]
天王寺璃奈 :
…私は、なんだか。
好きって言葉に、飾り立てたくなかった。
[ ] 天王寺璃奈 : それだけだ。
[ ] 涼宮ハルヒ : 顔がどんどん真っ赤になっていくハルヒ。
[ ] 天王寺璃奈 : 無表情のまま。
[ ] 天王寺璃奈 : 「……わたしだって」
[ ] 天王寺璃奈 : 「その、我儘に、引っ張られてるから…」
[ ]
天王寺璃奈 :
心にまで表情を失いたくなかった。
だから、…気持ちを全部、出せるところは出したい。
[ ] 天王寺璃奈 : 「……ハルヒと、いてて」
[ ] 天王寺璃奈 : ……たの、たのし……
[ ] 天王寺璃奈 : っ……。
[ ] 涼宮ハルヒ : 「………りなりー…」
[ ] 天王寺璃奈 : 「……楽しい!」
[ ] 涼宮ハルヒ : 拳を、ぎゅっと握り締める。
[ ] 涼宮ハルヒ : ……私は、超能力者なんかじゃない。
[ ] 涼宮ハルヒ : 宇宙人でもない。
[ ] 涼宮ハルヒ : 未来人でもない。
[ ] 涼宮ハルヒ : だから、他人の心なんて分からない。
[ ] 涼宮ハルヒ : でも
[ ] 涼宮ハルヒ : ……今のりなりーは……辛そうだった。
[ ] 涼宮ハルヒ : いいえ
[ ] 涼宮ハルヒ : 辛い顔をしていた、私は、そう感じた。
[ ] 涼宮ハルヒ : 無表情の奥で泣き叫ぶ表情が、見えた気がした。
[ ] 涼宮ハルヒ : 「……りなりー!」
[ ] 天王寺璃奈 : 「……わ…」
[ ] 涼宮ハルヒ : りなりーの両肩を掴み、向かい合わせになり。
[ ] 涼宮ハルヒ : 「………そ、その……」
[ ] 涼宮ハルヒ : 「……今は、まだ……私……本音で、伝えられないかもしれないけれども……」
[ ] 天王寺璃奈 : 顔同士を向き合い。
[ ] 涼宮ハルヒ : ……臆病な私の、"我儘"。
[ ]
天王寺璃奈 :
……あ、まつげ長い。
髪……ふんわりしてる……。
[ ] 天王寺璃奈 : こくこく、と頷きながら。
[ ] 涼宮ハルヒ : 「…………私、いつかきっと……りなりーのことを、もっと、もっとちゃんと見る」
[ ] 涼宮ハルヒ : 「……だから」
[ ] 涼宮ハルヒ : 「………そんな悲しそうな顔、私の前でしないで」
[ ] 涼宮ハルヒ : 私の我儘を、ぶつける。
[ ] 天王寺璃奈 : 「…………え」
[ ] 天王寺璃奈 : 無表情、のはずだった。
[ ] 天王寺璃奈 : のに。
[ ] 天王寺璃奈 : 「……なんで…」
[ ] 天王寺璃奈 : わかったの、私の……
[ ]
天王寺璃奈 :
”心の表情”が。
[ ] 涼宮ハルヒ : りなりーの目を、じっと見つめる。
[ ] 涼宮ハルヒ : 今度は、逸らさないように。
[ ] 天王寺璃奈 : その視線へと、向き直って。
[ ] 天王寺璃奈 : 「……悲しそうなんて、そんなこと…」
[ ] 涼宮ハルヒ : 「わかる」
[ ] 天王寺璃奈 : わかるわけない、だって私の心なんて…
[ ] 涼宮ハルヒ : そう言い切ってみせる。
[ ] 天王寺璃奈 : 「っ」
[ ] 涼宮ハルヒ : 「……何年友達やってきてると思ってるのよ」
[ ] 涼宮ハルヒ : 「馬鹿」
[ ]
天王寺璃奈 :
無表情。
が、幽かに揺らぎながらも。
[ ] 天王寺璃奈 : 「……あ、ぅ…」
[ ] 涼宮ハルヒ : 「いいから私の言う通りにしなさい」
[ ] 天王寺璃奈 : ……ハル…ヒ…。
[ ] 天王寺璃奈 : 「……う、ん」
[ ] 涼宮ハルヒ : 真剣な表情で、じっと見つける。
[ ] 涼宮ハルヒ : ハルヒの我儘の体現。
[ ]
天王寺璃奈 :
……私の、気持ちなんてわかるはずないって、そんなの一生浮かび上がることはないって。
思ってた、おもってたのに。
[ ] 涼宮ハルヒ : そして、りなりーの肯定に、満足そうな笑みを見せ。
[ ] 天王寺璃奈 : ……そんなこと、言われたら。
[ ] 涼宮ハルヒ : 「……ほら、りなりー、笑って?」
[ ] 涼宮ハルヒ : 「新年なのよ?」
[ ] 涼宮ハルヒ : また、りなりーの両ほっぺを摘まみ
[ ] 涼宮ハルヒ : ぎゅいっと上へ持ち上げる。
[ ] 天王寺璃奈 : 「……あう、あ…」
[ ] 天王寺璃奈 : 「……えへへ」
[ ] 天王寺璃奈 : ……不器用にも、口角を薄く上にやり。
[ ] 涼宮ハルヒ : 「……ふふふ」
[ ] 天王寺璃奈 : にこり、と。
[ ] 涼宮ハルヒ : 「可愛いわね……ほーんと」
[ ] 天王寺璃奈 : 「…………はわわ」
[ ] 天王寺璃奈 : ……か、可愛いって…また、言われちゃった…!
[ ] 天王寺璃奈 : …やっぱり、嬉しい、かも…!
[ ] 天王寺璃奈 : 「……そ、の……ハルヒ」
[ ] 涼宮ハルヒ : 「……んー?」
[ ] 天王寺璃奈 : ぱく、ぱく。
[ ] 涼宮ハルヒ : ……何気なく呟いた、"可愛い"に、ハルヒも耳元が赤くなりつつ。
[ ] 天王寺璃奈 : 口を何度も、何度も、開こうとして。
[ ] 天王寺璃奈 : 「………。」
[ ] 天王寺璃奈 : 「…私も、ハルヒの友だち…だからね」
[ ] 涼宮ハルヒ : 「………くす」
[ ] 涼宮ハルヒ : 「ええ、わかってるわ、りなりー」
[ ]
天王寺璃奈 :
閉じた後。
思い悩んだ言葉は宙に掻き消えた。
[ ] 涼宮ハルヒ : 「……私の一番の友達よ、貴女は」
[ ] 涼宮ハルヒ : ……噛みしめるように、そう言葉を紡ぐ。
[ ] 涼宮ハルヒ : ……これは本当のことなのだから。
[ ] 天王寺璃奈 : 「…………」
[ ] 涼宮ハルヒ : ……友達、そう、友達………。
[ ] 天王寺璃奈 : 「……友達」
[ ] 天王寺璃奈 : 「……嬉しいけど、嬉しくない」
[ ] 涼宮ハルヒ : 「……へっ!?」
[ ] 天王寺璃奈 : 布団に足を突っ込みながら。
[ ] 天王寺璃奈 : 「……なんか、こう」
[ ] 天王寺璃奈 : 「……狭い、ような」
[ ] 涼宮ハルヒ : 「せ、狭い……?」
[ ] 天王寺璃奈 : ……上手く伝えられない気持ちが、爆発しそうで。
[ ] 涼宮ハルヒ : 動揺した様子を見せながら。
[ ] 涼宮ハルヒ : ……だ、だめ、なのかしら……?これ、じゃあ……?
[ ] 天王寺璃奈 : 布団の中の足が、ばたばた。
[ ] 涼宮ハルヒ : 分かんない……分かんない分かんない……!
[ ] 涼宮ハルヒ : こんなの、私だって、分かんないわよ………!!
[ ] 天王寺璃奈 : 「……友だち、その言葉、いらない」
[ ] 天王寺璃奈 : 「……ただの…”一番”が、いい、かも」
[ ] 涼宮ハルヒ : 「………!」
[ ] 天王寺璃奈 : ……ぼそり、とつぶやいて。
[ ] 涼宮ハルヒ : その言葉を、聞き逃さない。
[ ] 涼宮ハルヒ : 一番。
[ ] 涼宮ハルヒ : 目をぎゅっと閉じ、そして開く。
[ ]
天王寺璃奈 :
顔に熱が、溜まっていく。
無表情の癖に、赤色になるのが自分でもわかる。
[ ] 涼宮ハルヒ : 「……ええ、りなりー、貴女は……私の"一番"よ」
[ ] 天王寺璃奈 : 「………!」
[ ] 涼宮ハルヒ : ………嘘じゃない、本当の言葉。
[ ] 涼宮ハルヒ : ………どうしてか、分からないけど。
[ ] 天王寺璃奈 : 「…えへへ」
[ ] 天王寺璃奈 : 「……素直に、なってくれた」
[ ] 涼宮ハルヒ : 私の心にある靄も、なんだか晴れたような気がして。
[ ] 涼宮ハルヒ : 「……な、なによ、もう」
[ ] 涼宮ハルヒ : 「りなりーのくせに生意気じゃない??このこの!」
[ ] 天王寺璃奈 : 無表情の中には、静かな微笑が。
[ ] 涼宮ハルヒ : りなりーのほっぺを摘み、ぐりぐりと回す。
[ ] 天王寺璃奈 : 「…ふぇえ~」
[ ] 涼宮ハルヒ : 「ほーれほれほれー!!」
[ ] 天王寺璃奈 : 「ほわあ~~あああ~~」
[ ] 涼宮ハルヒ : 楽しそうに、笑いながら。
[ ] 涼宮ハルヒ : りなりーのほっぺの感触を楽しみながら。
[ ] 天王寺璃奈 : さながら餅のように、むにむにと伸びて。
[ ] 涼宮ハルヒ : 「あーら、まるでお餅ね!」
[ ] 涼宮ハルヒ : 「縁起がいいじゃない!」
[ ] 涼宮ハルヒ : けらけらと笑いながら。
[ ] 天王寺璃奈 : ……楽しい、えへへ…!こうやって、我儘に付き合うのは、ずっとずっと、楽しい…!
[ ] 天王寺璃奈 : 「……しょ、正月だもん~~」
[ ] 涼宮ハルヒ : 「そうね~、お正月だものね~」
[ ] 天王寺璃奈 : どこか外れたような言葉を言いながら、振り回されて。
[ ] 涼宮ハルヒ : 「……それなら、寝正月のままってのも、勿体ないじゃない?」
[ ] 涼宮ハルヒ : いたずらな笑みを見せ。
[ ] 天王寺璃奈 : 「………」
[ ] 天王寺璃奈 : 「…確かに」
[ ] 涼宮ハルヒ : 「りなりー、私は貴女とお出掛けしたいわ!」
[ ] 天王寺璃奈 : こくり、と頷いて。
[ ] 涼宮ハルヒ : だって、そうよ、勿体ないもの。
[ ] 天王寺璃奈 : 「……私も、したいと思ってた」
[ ] 涼宮ハルヒ : もっと色んなところに行って、たくさん思い出、作ってみたいじゃない!
[ ] 涼宮ハルヒ : ……りなりーとの、大切な思い出……。
[ ]
天王寺璃奈 :
……折角、二人っきりという二度とないチャンスだから。
いっぱい、遊んでみたい。
[ ] 涼宮ハルヒ : とくん、と心臓が脈動する。
[ ] 涼宮ハルヒ : 「……じゃあ、このまま出掛けちゃう?」
[ ] 天王寺璃奈 : そして……もっと……
[ ] 天王寺璃奈 : 「……うん、お出かけ」
[ ] 涼宮ハルヒ : ニヤリと笑い。
[ ] 涼宮ハルヒ : 「それじゃあ、決まりね!」
[ ] 天王寺璃奈 : ……私の、内側を知ってもらいたいから。
[ ] 天王寺璃奈 : 「…うん、こういうの…久しぶり」
[ ] 涼宮ハルヒ : そうして、こたつの中で
[ ] 涼宮ハルヒ : りなりーの手を、ぎゅっと握り締める。
[ ] 天王寺璃奈 : ………!
[ ] 涼宮ハルヒ : ニコ、とりなりーへ笑ってみせ。
[ ] 天王寺璃奈 : 同じくらい、強く握りしめて。
[ ] 天王寺璃奈 : 変わらずの顔を、ハルヒへと。
[ ] 涼宮ハルヒ : 「……っ………ふふ…」
[ ] 涼宮ハルヒ : 嬉しさが隠し切れない、といった表情で。
[ ] 涼宮ハルヒ : 手のひらから伝わる、りなりーの"温かさ"を感じ。
[ ] 涼宮ハルヒ : 「……よっこいしょっと!……うぅぅ~!さぶっ!」
[ ] 涼宮ハルヒ : こたつから出る。
[ ]
天王寺璃奈 :
「…………ハルヒ、楽しそう」
暖められた二人の手がそれを表していて。
[ ] 涼宮ハルヒ : そうして、肩を震わせながら。
[ ] 涼宮ハルヒ : 「……えっ!?」
[ ] 天王寺璃奈 : 同じように、ゆっくりと外に。
[ ] 涼宮ハルヒ : 「そ、そりゃあそうよ!ええ!正月だし、それに……」
[ ] 涼宮ハルヒ : 「………りなりーとたくさん遊べるもの」
[ ]
天王寺璃奈 :
ひゅう、と体を冷気が通り。
体を無言で震わせる。
[ ] 天王寺璃奈 : ちらり、と床下を見て。
[ ] 天王寺璃奈 : 「…二人っきり、で」
[ ] 涼宮ハルヒ : 口元に、白い霧がかかる。
[ ] 涼宮ハルヒ : ハルヒの熱が、外へ溢れるように。
[ ]
天王寺璃奈 :
……独占してしまっている、その事実が。
なんだか嬉しくって、また。
[ ] 涼宮ハルヒ : 「……こういうのも、悪くないじゃない?」
[ ] 涼宮ハルヒ : そう言い、りなりーの手をさらにぎゅっと、強く握りしめる。
[ ]
天王寺璃奈 :
……えへへ、と心の中で喜び。
その笑いはいずこ、結局内にしか見えないが。
[ ] 涼宮ハルヒ : ばくん、ばくん、ばくん、ばくん、ばくん。
[ ] 涼宮ハルヒ : 心臓が、さらに鼓動していく。
[ ] 涼宮ハルヒ : ……あーーもう、私ったら……!子どもみたいに……!
[ ] 涼宮ハルヒ : ………でも、これだけは、嘘をつけないわ……。
[ ] 涼宮ハルヒ : ……りなりーと出会えて、良かった。
[ ] 涼宮ハルヒ : りなりーと一緒にいられて、良かった。
[ ] 天王寺璃奈 : 「……悪くない、私も、すっごく、楽しみ」
[ ] 涼宮ハルヒ : ……だから、りなりーと、これからもずっと……。
[ ] 涼宮ハルヒ : 「………」
[ ] 涼宮ハルヒ : 「……ちょっと、いい、かしら…?」
[ ] 天王寺璃奈 : ぼそり、一言一言区切る様に。
[ ]
天王寺璃奈 :
「………?」
きょとん、とした顔で。
[ ] 涼宮ハルヒ : 「………ん」
[ ] 涼宮ハルヒ : そう言い、ポケットから紙袋を取り出し、りなりーへ差し出す。
[ ] 涼宮ハルヒ : 「……クリスマスに、渡せなかったから」
[ ] 天王寺璃奈 : 「………え」
[ ]
涼宮ハルヒ :
頬を掻きながら、視線を少しだけ逸らす。
顔も、赤くなっていき。
[ ]
天王寺璃奈 :
…クリスマス。
その時はライブがあって、どうにも忙しくって、みんなと会えなかった日。
[ ] 天王寺璃奈 : 「……あり、がと」
[ ] 涼宮ハルヒ : 「………ん」
[ ]
天王寺璃奈 :
その紙袋を、大事そうに。
おそるおそる手に取って。
[ ] 涼宮ハルヒ : 恥ずかしくて、仕方ない。
[ ] 天王寺璃奈 : …………。
[ ] 涼宮ハルヒ : ……お揃いの、手袋を、買っただなんて。
[ ] 涼宮ハルヒ : ……と、友達なら、このくらいフツーでしょ……?
[ ] 天王寺璃奈 : ……顔がぼおっと、熱くなるのを感じる。
[ ] 天王寺璃奈 : 「…これ…」
[ ] 天王寺璃奈 : 「……ハルヒが、いつも着てるのと…」
[ ] 涼宮ハルヒ : 「…………」
[ ] 涼宮ハルヒ : 「に、似合わないって思ったら、捨てていいわよ!」
[ ] 天王寺璃奈 : じっと、無表情でハルヒを見つめて。
[ ] 天王寺璃奈 : 「……ううん」
[ ] 涼宮ハルヒ : 「私の、押し付けみたいなもの……だし……」
[ ] 天王寺璃奈 : 「大切に、する」
[ ] 涼宮ハルヒ : りなりーの視線に耐え切れないような表情をし。
[ ] 涼宮ハルヒ : 「……!」
[ ] 天王寺璃奈 : ゆっくり、優しく……紙袋を抱きしめて。
[ ] 涼宮ハルヒ : 目を少し見開く。
[ ] 天王寺璃奈 : 目を閉じる。
[ ] 涼宮ハルヒ : ああ、もう、やばい、なにこれ。
[ ] 涼宮ハルヒ : ニヤニヤしちゃう。
[ ] 涼宮ハルヒ : 何よ私……ほんと……!
[ ]
天王寺璃奈 :
…お、お揃いなんて…!えへ、えへへ!
嬉しいなあ、すっごくすっごく嬉しい!
[ ] 涼宮ハルヒ : こんなの、まるで……まるで────────
[ ] 涼宮ハルヒ : ────────恋人にプレゼントを渡した時みたいじゃない……!
[ ] 天王寺璃奈 : その気持ちは出る事もなく、ただ無表情に。それでも。
[ ] 天王寺璃奈 : 「…嬉しい」
[ ] 涼宮ハルヒ : 「…………それなら……良かった、わ」
[ ] 天王寺璃奈 : 「…ハルヒの、気持ちが、籠ってるから」
[ ] 涼宮ハルヒ : 声が段々と萎んでいくように。
[ ] 天王寺璃奈 : 目をゆっくりと、開きながら。
[ ] 涼宮ハルヒ : 「っ……わ、私の、気持ち……え、ええ、そうよ!」
[ ] 涼宮ハルヒ : 「りなりーが寒くなりませんようにーって、願いを込めたのよ!」
[ ] 天王寺璃奈 : 「……」
[ ] 天王寺璃奈 : じっと、見つめて。
[ ] 天王寺璃奈 : 「……もっと」
[ ] 天王寺璃奈 : 「もっと、願い、ほしい」
[ ] 涼宮ハルヒ : 「……も、っと……?」
[ ] 天王寺璃奈 : こくり、と頷いて。
[ ] 天王寺璃奈 : ………。
[ ] 涼宮ハルヒ : 「そ、それは……えっと……そう、ね……それ、なら……」
[ ] 天王寺璃奈 : …なんだか、今日は…私……変……?
[ ] 涼宮ハルヒ : ……あああ、もう、私……!ダサい……!何よこのザマ……!
[ ] 天王寺璃奈 : ………いつもより、なんか、口が動くような…。
[ ] 涼宮ハルヒ : いつもの私はどこに行ったのよ……!
[ ] 天王寺璃奈 : 「……いいの」
[ ] 涼宮ハルヒ : ………こんな、こんな……心、かき乱されて……。
[ ] 天王寺璃奈 : 「…思ってくれたことで、いいから……」
[ ]
天王寺璃奈 :
じっと、無表情で見つめて。
その顔の奥には、期待が含まれていて。
[ ] 涼宮ハルヒ : ……りなりー……。
[ ] 涼宮ハルヒ : ………あったかいわ……。
[ ] 涼宮ハルヒ : 「………ん、わかった、わ……」
[ ] 涼宮ハルヒ : 「……ちょっと、最近ずっと思ってたことがあるから……」
[ ] 涼宮ハルヒ : 「……歩きながらで、いいかしら……?」
[ ] 天王寺璃奈 : 「……うん」
[ ] 天王寺璃奈 : こくん、と頷いた。
[ ] 天王寺璃奈 : ……ちょっとだけ、いや、結構…嬉しかった。
[ ] 天王寺璃奈 : ハルヒの、正直を知れたから。
[ ] 涼宮ハルヒ : ……言っちゃった……言っちゃったわ、私……。
[ ] 涼宮ハルヒ : もう、こうなったら、後には引けない……。
[ ] 涼宮ハルヒ : ちらりとりなりーを見て。
[ ] 涼宮ハルヒ : ………私の、本当の気持ちを聞いても、どうか、どうか……。
[ ] 涼宮ハルヒ : ……私のことを、嫌いにならないでいてくれますように………。
[ ] 涼宮ハルヒ : 貴女の温かさ……可愛さ……全部、ぜーんぶ、私のものに、したい、から……。
[ ] 涼宮ハルヒ : そうしてハルヒとりなりはー、家を出た。
[ ] 天王寺璃奈 : やっぱり、叶わない。
[ ] 天王寺璃奈 : ハルヒの、どこか私の本当の”顔”を見るような言葉は、私の奥深くを見抜いてくれる。
[ ] 天王寺璃奈 : それはすっごく、嬉しくて、羨望する。
[ ] 天王寺璃奈 : …だから、こそ。
[ ] 天王寺璃奈 : あなたを知りたいと思った。
[ ] 天王寺璃奈 : あなたの、本当の”顔”を。
[ ] 天王寺璃奈 : どうか、どうか────
[ ] 天王寺璃奈 :
[ ] 天王寺璃奈 : その時こそ。
[ ] 天王寺璃奈 :
[ ] 天王寺璃奈 : ”好き”
[ ] 天王寺璃奈 :
[ ] 天王寺璃奈 : そう言えますように。
[ ] 天王寺璃奈 :
[ ] 天王寺璃奈 :
[ ] 天王寺璃奈 :
[ ] 涼宮ハルヒ : 凍てつくような寒さ。
[ ] 涼宮ハルヒ : それでいて、空は晴れ晴れとしていた。
[ ] 涼宮ハルヒ : 雲一つも無く……。
[ ] 涼宮ハルヒ : ……私の心も、あんな風に、曇り一つも無ければ、どれだけ良かったことか……。
[ ] 涼宮ハルヒ : そうして、りなりーと肩を並べ
[ ] 天王寺璃奈 : ただその寒さに震える。
[ ] 涼宮ハルヒ : お揃いの手袋を着け
[ ] 天王寺璃奈 : ぷるぷると。
[ ] 涼宮ハルヒ : 「本当にさっぶいわねぇ!」
[ ] 天王寺璃奈 : しかし、手だけは確かに冷えることはない。
[ ] 涼宮ハルヒ : 震えるりなりーを見て。
[ ] 涼宮ハルヒ : ……………。
[ ] 天王寺璃奈 : 「……うん、すっごく寒い」
[ ] 涼宮ハルヒ : ぎゅっと、手を握り締め。
[ ] 涼宮ハルヒ : 「………友達なら、このくらい、普通よね?」
[ ] 涼宮ハルヒ : そのまま、ぐいっと引っ張り。
[ ] 涼宮ハルヒ : 腕を絡める。
[ ] 天王寺璃奈 : 「…………む、とも……!!」
[ ] 涼宮ハルヒ : 「…………」
[ ] 涼宮ハルヒ : ……あーーーーーー!や、やっちゃったわ……!!
[ ] 天王寺璃奈 : びっくり……したようで、無表情。
[ ] 涼宮ハルヒ : て、ていうか……りなりーの体小っちゃくて……か、可愛い……!!
[ ] 天王寺璃奈 : ぷるぷる、その震えが……ハルヒへと伝わり。
[ ] 涼宮ハルヒ : 腕の中に、すっぽりと納まってるみたいで……。
[ ] 涼宮ハルヒ : 「……ほ、ほら」
[ ] 涼宮ハルヒ : 「体、くっつけ合わせた方が……」
[ ] 涼宮ハルヒ : 「……ね?あったかいじゃない?」
[ ]
天王寺璃奈 :
……寒さだけでもない、ハルヒと……一緒にいたい。
その気持ちが現れた、震え。
[ ] 天王寺璃奈 : 「……」
[ ]
天王寺璃奈 :
こくり、と頷いて。
体を、もう少しハルヒへの方へ。
[ ] 涼宮ハルヒ : 「………」
[ ] 天王寺璃奈 : ……わたしよりも、おっきくて。
[ ] 天王寺璃奈 : わたしよりも、ずっとあったかい。
[ ] 涼宮ハルヒ : ……寒空へ奪い取られる熱が、りなりーから補給され……心だけは、ずっと、ずっと……暖かな、ままで……。
[ ] 涼宮ハルヒ : 「………あ」
[ ] 涼宮ハルヒ : ふと、声を漏らす。
[ ] 天王寺璃奈 : 「………」
[ ]
天王寺璃奈 :
すっぽり、ちょこんと。
腕の中に納まったまま、上を、ハルヒを見上げる。
[ ] 涼宮ハルヒ : その視線の先は、子ども達が遊んでいる公園。
[ ] 涼宮ハルヒ : 色んな家族達が、わいわいと正月気分を楽しんでいる、そんな光景。
[ ] 涼宮ハルヒ : ……りなりーの視線に、ちょっと……嬉しくもなり、恥ずかしくもなりながら……。
[ ] 涼宮ハルヒ : 「………ねぇ、りなりー」
[ ] 天王寺璃奈 : 「なぁに?」
[ ] 涼宮ハルヒ : 「………少し、変なこと、聞いても……いい、かしら……?」
[ ] 涼宮ハルヒ : その目線は、ずっと公園にいる様々な家族へ。
[ ] 天王寺璃奈 : 「……いいよ」
[ ] 涼宮ハルヒ : その空には、凧がふわふわと浮かんでおり。
[ ] 涼宮ハルヒ : 「…………その、りなりーは……」
[ ]
天王寺璃奈 :
ぷるぷる、と震えているのが。
確かに止まって、ゆっくりとハルヒを見つめる。
[ ] 涼宮ハルヒ : 「……恋、とかって……考えたこと、ある……かしら……?」
[ ] 天王寺璃奈 : 「………恋」
[ ] 天王寺璃奈 : ……ない。
[ ] 涼宮ハルヒ : 「…………ねぇ、恋って……」
[ ] 天王寺璃奈 : ふるふる、と首を振り。
[ ] 涼宮ハルヒ : 「……男の人と、女の人がするもの……なのよね」
[ ] 涼宮ハルヒ : 若い男女の夫婦と、凧揚げではしゃぐ子供。
[ ] 涼宮ハルヒ : そんな光景を見て。
[ ]
天王寺璃奈 :
…ゲームで見た、ような。煌びやかなモノ。
それは全く、私にはない。
[ ] 天王寺璃奈 : ……ただ。
[ ] 天王寺璃奈 : 「……そうなの?」
[ ] 涼宮ハルヒ : 「………へ?」
[ ] 涼宮ハルヒ : 変な声を上げる。
[ ] 涼宮ハルヒ : 視線を、りなりーの方へ戻し。
[ ] 涼宮ハルヒ : 「え、い、いや、そう、なんじゃないの……かしら……?」
[ ]
天王寺璃奈 :
煌びやか、でもないかもしれない。
ただ、ただ。
[ ] 涼宮ハルヒ : 予想だにしていない、りなりーの応答。
[ ] 天王寺璃奈 : 「……ドキッとしちゃうこと、心が…動くこと」
[ ] 涼宮ハルヒ : ドキ。としてしまった。
[ ] 涼宮ハルヒ : 「…………」
[ ] 天王寺璃奈 : 「それが、恋なら…」
[ ] 天王寺璃奈 : 「…そういう”障害”は、いらないと思う」
[ ] 涼宮ハルヒ : 「………っ……!?」
[ ] 涼宮ハルヒ : 頭をバッドで、フルスイングで殴られたようだった。
[ ] 涼宮ハルヒ : 予想外。
[ ] 涼宮ハルヒ : りなりーから、まさか、そんな答えが。
[ ] 涼宮ハルヒ : いえ、違う、私が動揺したのは、そうじゃない。
[ ] 天王寺璃奈 : 「そういう……仮面は、つけても…仕方ない気がする」
[ ] 涼宮ハルヒ : 「…………」
[ ] 涼宮ハルヒ : 「か、めん……」
[ ] 天王寺璃奈 : 心の内を隠すモノ。
[ ] 涼宮ハルヒ : 私の中で、何かが、ぼろぼろと崩れ落ちていくようだった。
[ ] 天王寺璃奈 : ……抱き寄せたハルヒから、少し離れて。
[ ] 天王寺璃奈 : じっと見つめる。
[ ] 涼宮ハルヒ : それは────────私の、仮面、そのもの。
[ ] 涼宮ハルヒ : 「っ……!」
[ ] 涼宮ハルヒ : 不安そうな表情で、りなりーへ見つめ返す。
[ ] 天王寺璃奈 : 「……仮面はね、”思い”を伝えやすいの」
[ ] 天王寺璃奈 : 「だって、それを付けてれば、他の人はみんな、そっちを見てくれる」
[ ]
天王寺璃奈 :
私の”仮面”、りなちゃんボードのように。
偽るときでも、見せる時でも、仮面は大切で。
[ ]
天王寺璃奈 :
その不安げな顔を、安心させるように。
口を指で持って、口角を曲げ。
[ ] 天王寺璃奈 : 「……でもね」
[ ] 涼宮ハルヒ : 「………!」
[ ] 天王寺璃奈 : 「心の奥を見てくれる人には、いらないの」
[ ] 涼宮ハルヒ : 手が、震える。
[ ] 涼宮ハルヒ : 足が、震える。
[ ] 涼宮ハルヒ : 目が、震える。
[ ] 涼宮ハルヒ : ……寒さのせい、なんかじゃない。
[ ] 涼宮ハルヒ : 「……いら、ない………?」
[ ] 天王寺璃奈 : 「…そう」
[ ] 天王寺璃奈 : 「だって私は」
[ ] 天王寺璃奈 :
[ ] 天王寺璃奈 : 「ハルヒの事」
[ ] 天王寺璃奈 : 「好きだから」
[ ] 天王寺璃奈 :
[ ] 天王寺璃奈 : 「だから、いらない」
[ ] 涼宮ハルヒ : 「────────────」
[ ] 涼宮ハルヒ : 両手で、自身の口を抑える。
[ ] 涼宮ハルヒ : あ、ああ、あああぁぁぁ………。
[ ] 天王寺璃奈 : この気持ちの前には、仮面だって、性別だって、全て全て、必要ない。
[ ] 涼宮ハルヒ : バクン、バクン、バクン、バクン、バクン、バクン、バクン、バクン。
[ ] 涼宮ハルヒ : 心臓の暴走が、止まらない。
[ ] 天王寺璃奈 : そうして、一度離れた体を、くっつけるように。
[ ] 天王寺璃奈 : ハルヒへと、体を寄せる。
[ ] 涼宮ハルヒ : 「………あ」
[ ] 涼宮ハルヒ : 何も抵抗できず、そのまま、抱き締められ。
[ ] 天王寺璃奈 : 「……寒そうだったから」
[ ] 天王寺璃奈 : 無表情。ときどき笑み。
[ ] 涼宮ハルヒ : 嘘……こん、な………。
[ ] 天王寺璃奈 : 空は曇りもないけれど、私の顔はまちまちだ。
[ ] 涼宮ハルヒ : ……わ、私……私………!
[ ] 涼宮ハルヒ : 「…………ね、ねぇ……」
[ ] 天王寺璃奈 : 「……うん」
[ ] 涼宮ハルヒ : ……もう、私……。
[ ] 涼宮ハルヒ : ………迷わない。
[ ] 天王寺璃奈 : 「……聞かせて」
[ ] 涼宮ハルヒ : 目を、ゆっくりと閉じ。
[ ]
天王寺璃奈 :
…そう、私の我儘だけど。
聞きたい。
[ ] 涼宮ハルヒ : 「…………私も、私も……」
[ ] 涼宮ハルヒ : 私覚悟してる。
[ ] 涼宮ハルヒ : 「………最初は、りなりーのこと……ただ、可愛い、友達だって、思ってて……」
[ ] 涼宮ハルヒ : 暗い未来だって。
[ ] 涼宮ハルヒ : 「……でも、でも……」
[ ] 涼宮ハルヒ : 強くなって。
[ ] 天王寺璃奈 : ゆっくり、言葉を噛むように味わって。
[ ] 涼宮ハルヒ : 「………ずっと、りなりーと、過ごしている内に……私、私っ……!」
[ ] 涼宮ハルヒ : 運命変えられるかもね。
[ ] 涼宮ハルヒ : my wish。
[ ] 涼宮ハルヒ : 「…………」
[ ] 涼宮ハルヒ : すぅ……と、息を、吸い────────。
[ ] 涼宮ハルヒ :
[ ] 涼宮ハルヒ : 「────────私も、りなりーのこと!!大好きになっちゃったのよ!!!」
[ ] 涼宮ハルヒ : 「わかんないけど……!!私、貴女のことが!!!好きになって……!!!」
[ ] 天王寺璃奈 : 「 」
[ ] 天王寺璃奈 : 「……………」
[ ] 涼宮ハルヒ : 「その無表情が可愛くて……!!!その奥にある、本当の顔も可愛くて……!!!!」
[ ] 涼宮ハルヒ : 「我儘な私を、みんなの嫌われ者な私をっ……!!!ずっと、見てくれて……!!!」
[ ] 天王寺璃奈 : …………。
[ ] 涼宮ハルヒ : 「りなりーの……あったかくて……!!!強くて………もう……私、私っ……」
[ ] 天王寺璃奈 : 無表情、その顔に。
[ ] 涼宮ハルヒ : ボロボロと、涙が零れていき。
[ ] 天王寺璃奈 : ぽろぽろ、と、天気雨。
[ ] 涼宮ハルヒ : 声帯が、震え。
[ ] 天王寺璃奈 : ときどき、笑み。ときどき、雨。
[ ] 天王寺璃奈 : 「……う、ぅ」
[ ] 涼宮ハルヒ : 「……あなたが、大好きなのッッ!!!!」
[ ] 涼宮ハルヒ : そのまま、力強く
[ ] 涼宮ハルヒ : 我儘に
[ ] 涼宮ハルヒ : りなりーの体を、抱き締める。
[ ] 天王寺璃奈 : 「…………っ、ぁあ」
[ ] 涼宮ハルヒ : 絶対に離さない。
[ ] 天王寺璃奈 : …ああ、ああぁ。
[ ] 涼宮ハルヒ : 一生。
[ ] 涼宮ハルヒ : 私だけの、りなりー。
[ ]
天王寺璃奈 :
やっと、本音を言ってくれたね。
なんて言葉は出なかった、ただ。
[ ] 涼宮ハルヒ : 私に向けてくれた、"仮面"の奥の顔。
[ ] 天王寺璃奈 : 「……うれ、じ、ぃ」
[ ] 涼宮ハルヒ : 誰にも、見せたくない。
[ ] 涼宮ハルヒ : 「……りな、り゛ぃ……」
[ ] 天王寺璃奈 : 震える声で、ただ。
[ ] 涼宮ハルヒ : 顔が、涙でぐちゃぐちゃになる。
[ ] 天王寺璃奈 : きゅっと、小さな手で抱き締めて。
[ ] 涼宮ハルヒ : だから私ついていくよ
[ ] 涼宮ハルヒ : どんな辛い世界の闇の中でさえ
[ ] 涼宮ハルヒ : きっとあなたは輝いて
[ ] 涼宮ハルヒ : 超える未来の果て
[ ] 涼宮ハルヒ : 弱さ故に魂こわされぬように
[ ] 涼宮ハルヒ : my way 重なるよ
[ ] 涼宮ハルヒ :
[ ] 涼宮ハルヒ : 「────────ちゅっ」
[ ] 涼宮ハルヒ :
[ ] 涼宮ハルヒ : りなりーの唇を、塞ぐ。
[ ] 天王寺璃奈 : 「ふぁ、ん」
[ ] 天王寺璃奈 : 璃奈は一瞬、息が止まっていて。
[ ]
涼宮ハルヒ :
公衆の場?そんなの、知らない!!!
私の、我儘……!!全部、全部全部……!!!
[ ] 涼宮ハルヒ : ぶつけるんだから!!!
[ ] 涼宮ハルヒ : 「りなりー……!りなりー、りなりー……!!」
[ ] 天王寺璃奈 : ……どきどきどきどき。
[ ] 涼宮ハルヒ : 何度も、貴女を求める。
[ ] 天王寺璃奈 : 「ハル………ヒ……」
[ ] 天王寺璃奈 : ぎゅう、と抱きしめる力が強く。
[ ] 天王寺璃奈 : ……ああ、だめだ。
[ ] 涼宮ハルヒ : あああ、私………好きになって、いいんだ。
[ ] 天王寺璃奈 : ……私、我儘だ。
[ ] 涼宮ハルヒ : りなりーのこと、好きになって、いいんだ……。
[ ] 天王寺璃奈 : ……独占したい、ずっと、この。
[ ] 天王寺璃奈 : 私の大好きな、ツナガリを。
[ ] 涼宮ハルヒ : ずっと、仕舞い続けて、勘違いだと思っていた、この感情。
[ ] 涼宮ハルヒ : 嘘なんかじゃ、ないんだ……!!
[ ] 天王寺璃奈 : ぎゅっと、大好きで、愛おしいこの人を!!!
[ ] 天王寺璃奈 : 「……好き、すき……」
[ ] 天王寺璃奈 : ぼそりぼそりと、呟きながらも。
[ ] 涼宮ハルヒ : 「……私も、"好き"」
[ ] 涼宮ハルヒ : 可愛いには、2種類。
[ ] 涼宮ハルヒ : 愛玩動物を見た時に抱く感情。
[ ] 涼宮ハルヒ : そして
[ ] 涼宮ハルヒ : 生涯を共にしたいと思う相手に抱く感情。
[ ] 涼宮ハルヒ : ……私が今、りなりーに抱いている、この、"可愛い"は……。
[ ] 涼宮ハルヒ : ………"ラブ"。
[ ] 涼宮ハルヒ : 「…………えへ、えへへへ……」
[ ] 天王寺璃奈 : 「……すき、好き!好き、好き!!」
[ ] 天王寺璃奈 : 何度も何度も、つっかかって。
[ ] 天王寺璃奈 : 口の奥で詰まって、破裂しそうなくらい溜めたその2文字。
[ ] 涼宮ハルヒ : 「……ええ……!私だって、好き……好き!……大っっっ好き……!!!」
[ ] 天王寺璃奈 : 今、言えるだけ、ずっと、ずっと。
[ ] 天王寺璃奈 : 全部、爆発させる。
[ ] 涼宮ハルヒ : りなりーを抱き締めながら、愛おしそうに、涙が頬を伝いながら、笑う。
[ ] 天王寺璃奈 : 「……えへへ、えへ……好き、だよ…ハル、ヒ……」
[ ] 天王寺璃奈 : その抱き締めに、強く…ただ強く、願うように抱きしめ返す。
[ ] 涼宮ハルヒ : 「うん……うん……うん…!!」
[ ] 涼宮ハルヒ : 「……私……幸せ……」
[ ] 天王寺璃奈 : ……私たちが、ずっと……ツナガリ、コネクトしていられるように。
[ ] 天王寺璃奈 : こくこく、何度も頷いて。
[ ] 天王寺璃奈 : ぎゅう、とハルヒの胸に顔を埋める。
[ ] 天王寺璃奈 : 涙が、止まらないから。
[ ] 涼宮ハルヒ : りなりーの頭を受け止め、優しく、愛おしそうに撫で。
[ ] 涼宮ハルヒ : 「………ふふふ……」
[ ] 涼宮ハルヒ : 「……今年の抱負……叶っちゃった……」
[ ] 涼宮ハルヒ : いたずらな笑みを浮かべながら。小さなりなりーの体を抱き締め。
[ ] 天王寺璃奈 : その言葉を聞いて、繰り返すように。
[ ] 天王寺璃奈 : 「……私も、実は…叶ったの」
[ ] 天王寺璃奈 : そう言って、大きなハルヒへと体を預けて。
[ ] 涼宮ハルヒ : 「……へ?」
[ ] 天王寺璃奈 : 「…仲良くなりたい、って」
[ ] 天王寺璃奈 : 「……その」
[ ] 天王寺璃奈 :
[ ] 天王寺璃奈 : 「ハルヒと」
[ ] 天王寺璃奈 :
[ ] 天王寺璃奈 : 「……だったの」
[ ] 涼宮ハルヒ : 「────」
[ ] 涼宮ハルヒ : 顔が、さらに真っ赤に。
[ ] 涼宮ハルヒ : ああぁあああぁぁぁぁぁぁぁぁ………。
[ ] 涼宮ハルヒ : 可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い……!
[ ] 涼宮ハルヒ : 好き好き好き好き好き好き好き………!!
[ ] 涼宮ハルヒ : 「……りなりーーー!!私!!!貴女を幸せにするから!!!」
[ ]
天王寺璃奈 :
言った後。
恥ずかしそうに、ぽすんと体重を預けて。
[ ] 天王寺璃奈 : 「…え、あ……」
[ ] 天王寺璃奈 : うれし、ぃ……!
[ ] 天王寺璃奈 : 「……好き」
[ ] 天王寺璃奈 : 嬉しいって言葉よりも、今は、言えるこの”好き”を繰り返していたかった。
[ ] 涼宮ハルヒ : 「………恋人同士に、なった、のよ、ね……?私達……」
[ ] 涼宮ハルヒ : 再確認するように。
[ ] 天王寺璃奈 : 「………好き同士の、関係だもん」
[ ] 涼宮ハルヒ : これが、夢でないことを確かめるように。
[ ]
天王寺璃奈 :
そう、頷いて。
自分に、深く刻み込むために。
[ ] 涼宮ハルヒ : 「………ふふ、ふふふふ……」
[ ] 涼宮ハルヒ : ずっと口角が吊り上がって止まらない、にやけが、止まらない。
[ ] 涼宮ハルヒ : 幸せ。
[ ] 天王寺璃奈 : 「ぁう……えへ、えへへへ……」
[ ] 涼宮ハルヒ : そうして、改めて……りなりーと手を繋ぎ。
[ ]
天王寺璃奈 :
ハルヒの嬉しさと、私自身の嬉しさで。
体が熱を持ったみたいに、熱くなっていくのを感じる。
[ ] 涼宮ハルヒ : 「………初詣……行きましょうか、お願い事は……ふふふ」
[ ] 天王寺璃奈 : その手を繋ぐ。
[ ] 涼宮ハルヒ : 我儘姫は、すっかり気分高揚。
[ ] 天王寺璃奈 : 「……二人一緒に、いようね…?」
[ ] 涼宮ハルヒ : ニコりと笑い。
[ ] 涼宮ハルヒ : 頷く。
[ ] 天王寺璃奈 : 二人の手は、もう十分に温かい。
[ ] 天王寺璃奈 : でも、まだ足りない。
[ ] 天王寺璃奈 : そんな、寒さだった。
[ ] 涼宮ハルヒ : だから、これからのために、私達は
[ ] 涼宮ハルヒ : 次へと、進む。
[ ] 涼宮ハルヒ :
[ ] 涼宮ハルヒ : 今二人に God bless..……
[ ] 涼宮ハルヒ :
[ ] 涼宮ハルヒ :
[ ] 涼宮ハルヒ :